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[ 米国 ] 心を読む:手術の要らない、超音波を使った新しいタイプのBCI

ここ2−3年、チャットGPTで世界中にAI旋風を吹かせているOpen AI社が、従来のBrain Computer Interface( 以下BCI)とは全く違ったタイプのBCIを開発しているスタートアップ社Merge Labs社を大きくバックアップしているというニュースが、この2−3ヶ月AI分野で飛び回っています。 このMerge Labs社のBCIは、脳にドリルで穴を開けチップを入れることなく、また血管にデバイスを挿入する必要もなく、単に超音波を使って脳内のシグナルを読み取るという全く新しいアプローチのテクノロジーとのことで多いに注意を引くものです。メカニズムとしてはGenetic Neuron Modification(一部の脳神経の遺伝子組み換え)と超音波トランスデューサーの二つのテクノロジーを用いるもので、一部の脳神経が超音波に対して反応するようにし、そしてウエアブルのヘッドバンドを通して超音波を脳に送り戻ってくるシグナルをメッセージに変換するという仕組みのようです。 まだまだ開発の早期段階なので、ウエブサイトもなく、詳細はまだ発表していないようなので引き続き情報を追いかけていこうと思います。

現時点でMerge Labs社は$850 million (約 8億5千万ドル、約1321億4千万円)の価値ありとされており、Open AI社からは $250 million (2億5千万ドル、約318億6千万円)の投資が入っているそうです。 Co-founders(設立者達)はOpen AIのSam Altman氏、そしてTools for Humanity社(身分証明として目の虹彩をスキャンするデバイスの会社)のAlex Blania氏、そしてCaltech(California Institute of Technology)のモレキュラーエンジニアリング教授のMikhail Shapiro氏の3人です。 Shapiro教授は超音波を使った脳との相互作用技術を開発した有名なサイエンティストで、Merge LabsのBCIのテクノロジーの鍵となる人です。

Merge LabsのBCIは、このコラムでも去年から何回かカバーしているイーロンマスク氏のニューラルリンク社のBCIをライバルとするもので、頭蓋骨に穴を開けない、脳組織に小さな針を幾つも刺さない、つまり危険な手術をしない、そのためより多くの一般人にもアクセスし易いテクノロージーとなるであろうと、その強みを強調しています。また、同じくこのコラムでも何回か紹介したシンクロン社の頭を囲む血管内にステントのように極小のデバイスを挿入して脳のシグナルを受け取るというステントロードBCIのライバルともなります。 ニューラルリンク社やシンクロン社はすでに人間トライアルが始まっていますが、このMerge Labs社はトライアルまでにはまだしばらくかかると想像できますが、何か動きが出てきましたら、お知らせしていこうと思います。

https://www.precedenceresearch.com/news/altman-brain-computer-interface

関連リンク

https://futurism.com/health-medicine/sam-altman-startup-read-brain

https://www.indiatoday.in/technology/news/story/openai-sam-altman-wants-to-read-your-mind-now-with-no-surgery-2808548-2025-10-26

2025年11月18日 報告者      Nobuko Schlough  (伸子シュルー)@P-ALS 米国在住      

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