前回の英国よりのニュース([ 英国 ] トフェルセン利用の状況 | P-ALS | すこやかさゆたかさの未来研究所)からほどなくして、英国でもALSに対する初めての治療薬として、新薬の安全性と有効性を審査する英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)はトフェルセンを使用承認しました。
しかし、承認されたからといって、すぐに適応患者さんが誰でもどこでも治療を受けられるか、という問題は残念ながら解決はしておらず、引き続き課題が山積みです。英国国立医療技術評価機構(NICE)はこの薬がNHSで日常的に処方されるのに十分な費用対効果があるかどうかを判断するのに数か月かかると予想しています。
その間、トフェルセンの製造元であるBiogenは、早期アクセス制度を通じてNHSにこの治療を無償で提供していますが、治療提供が可能な病院は限られており、全ての適応患者さんに治療が施せていない現状があります。この薬の投与に必要なケア(病院での毎月の腰椎穿刺)は患者1人あたり年間一万五千ポンドから三万ポンド(約300万円から600万円:2025年9月の為替)かかると推定されているのです。
自身もトフェルセン治療適応患者である元教師のセキン・マクガーク氏が、ウェス・ストリーティング保健相に対し、SOD1型MND患者にトフェルセンを投与するよう緊急の対策を訴えました。(*トフェルセンは、特定の遺伝子変異を持つMND患者の約2%に効果のある新しい治療法です。)
2025年8月11日のデイリー・エクスプレス紙に掲載されたこの訴えは、7月に「Prescribe Life(命を処方せよ)」キャンペーンの認知度向上のために行った活動に続くものでした。パーラメント・スクエア・ガーデンにはセキン氏の氷像が設置され、2万1000人以上の署名を集めた嘆願書が保健社会福祉省に提出されました。
現在、30人以上のMND患者が、開発元バイオジェン社が無料で提供する早期アクセス・プログラムを通じてトフェルセンを服用しています。
しかし、他の20人は、毎月の腰椎穿刺に必要な薬剤を投与できる地域医療サービスがないため、この薬を受け取ることができません。
MND協会のエンゲージメント・ディレクター、リチャード・エバンズ氏は次のように述べています。「この薬を1日でも受けられないということは、MNDの症状が悪化することを意味します。トフェルセンは無料で提供されており、現在、医薬品・医療製品規制庁(MHRA)の承認も取得しています。セキン氏をはじめとするSOD1型MNDの患者さん20人に、この命を救う治療を施すための資金が確保できない現状は、到底受け入れられません。簡単に言えば、彼らには待つ時間がないのです。」
リチャード氏はさらに、「ウェス・ストリーティング保健相には介入する権限があります。MND(精神疾患)に関する超党派議員連盟は、ストリーティング保健相との会談を要請しています。私たちはストリーティング保健相に、私たちの話に耳を傾け、積極的に関与するよう強く求めてきました。セキン氏がストリーティング氏に直接送るこの力強いメッセージに、ストリーティング氏が耳を傾けてくれることを願っています。この衝撃的な状況は、これ以上続くことはできません。」とコメントしています。
NHSの仕組みと、最新治療の費用対効果が簡単に合致できない事例だと思いました。仕組みを変えていくきっかけになるのか、今までの仕組みの中で運用できる体制を整えていけるのか、いずれにしても適応患者さんたちが一日も早くトルフェセンを利用できるようになることを願ってやみません。
*英国での承認決定は、欧州委員会が2024年5月に例外的な状況下でトフェルセンの販売承認を付与したことに続くものです。
*英国でのトフェルセンの承認は、第III相試験VALORのデータ、およびVALOR試験とその非盲検継続試験(OLE)の12ヶ月間の統合結果に基づいています。
2025年9月7日
Tokiko Kawashima from London, UK
First new ALS treatment approved in UK in 30 years – Drug Discovery World (DDW)
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Tofersen in the UK: our Prescribe Life campaign | MND Association
MND patient’s plea to Wes Streeting over drug to slow disease | UK | News | Express.co.uk