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日本におけるALS治療薬の開発状況 No.1

日本におけるALS治療薬の開発状況として、3点(高用量メコバラミン、ロピニロール、トフェルセン)についてリポートします。今回は高用量メコバラミンについてです。

 エーザイは2022年5月27日付けニュースリリースにて、メコバラミンの高用量製剤が、ALSの病態および機能障害の進行抑制を予定される効能または効果として、厚生労働省より希少疾患用医薬品に指定されたことを報告、2023年度中にALSに対する新薬承認申請を予定していると報告しています(2023、10/27現在、本剤を申請したとのニュースは未確認)。これは「高用量メチルコバラミン(メコバラミン)の筋萎縮性側索硬化症に対する第Ⅲ相試験-医師主導治験-」(主任研究者:徳島大学梶龍兒特命教授)における、良好な臨床試験結果を受けてのものです。本試験では、発症後1年以内の早期ALS患者126例を対象に、メチコバール注射剤50㎎の筋肉注射週2回投与群とプラセボ(偽薬)群に分け(各々63例)、16週後のALS評価ツール(ALSFRS-R、言語、嚥下、身の回りの動作などの12項目の機能を数値評価したもの)にて評価しています。メチコバール投与群はプラセボ群と比較し、ALSの進行を43%抑制したことが確認されたと報告しています。また、本試験では、リルゾール1など、服用中の既存の治療薬はそのまま継続させているため、リルゾール単独とリルゾール+メコバラミン投与との比較もできており、後者の方がALSの進行を45%抑制したとのことです。副作用も偽薬群と同等であったことから、発症早期のALS患者への高用量メコバラミンの有用性と安全性が確認されたとしています。2

 メコバラミンは活性型ビタミンB12を主成分としていて、注射剤と内服薬があります。注射剤は末梢神経障害およびB12欠乏による巨赤芽球性貧血への適応にて1982年にエーザイが承認取得、1984年より、同社から製造・販売されており、500μg(0.5mg)を週3回筋肉あるいは静脈内に注射するのが標準投与量です。治験での投与は、50㎎を週2回筋肉注射となっていますので、ALSにおいては、100倍量のメコバラミン投与が必要なようです。メコバラミンのALSへの作用メカニズムは解明されていませんが、神経保護作用、神経軸索再生作用の可能性が示唆されています。3

2023年11月7日 報告者 橋口裕二

報告者紹介

静岡県立大学薬学部卒業。製薬メーカーの研究開発部に17年間勤務後、GEHC Japanに6年間コンサルタントとして勤務。その後保険薬局にて、薬剤師業務に携わる。現在は宮崎市在住。趣味は、読書、映画鑑賞。

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