-遺伝的特性によってパーソナリティは決定され、その遺伝的特性がALSの発症にも何らかの役割を担っているのかもしれないという見解
性格の違いと特定の疾病の発症関係について、興味をひく記事が目につきましたので共有したいと思います。トラウマやストレスをどう対処するのかは、その人の性格によって大きく変わることは知られています。 長年の患者との接触、観察と洞察からその点に注意を払った研究をしてきた医師が世界には何人もいます。その一人、バンクーバーの医師ガボー・マテ氏は、一生長引くトラウマの影響に焦点を当てた研究をし数々のベストセラーを出し世界的に知名度の高い医師ですが、最近ではプリンス・ハリーのインタビューでもさらに有名になりYouTubeでも頻繁に登場する人物です。長年、バンクーバーホスピタルや家庭医診療所で医療を営みながら、トラウマやストレスの与える心身への深いインパクト、特に自律神経疾患や様々ながん、神経変性疾患(ALSやMSなど含む)との繋がりを研究してきています。
マテ氏はYouTubeなどのインタビューでも説明していますが、トラウマやストレスの対処メカニズムは性格によって大きく変わり、感情表現を抑制するタイプの人は、慢性病を患い易いことに気がついたそうです。病理のBiopsychosocial Aspects(生物学的および心理的社会的な側面)を強調しており、治療に携わる医療従事者たちは、心理的トラウマやストレスの疾病における役割をとても重要なものとして注目すべきだと促しています。
下記はMedium.comというオンライン誌で、彼の理論を紹介した記事です。
興味のある方へ。下記がマテ医師のウィキです。
CDC(Center for Disease Control and Preventiion, 米国疾病管理予防局)のサイトでも下記のように似たような内容の研究論文を紹介しています。「ALSの患者さんは、他の病気の患者さんに比べて特に ”Nice(いい人)” か? 」というアイキャッチーなフレーズです。シドニー大学の研究者たちのオンラインのアンケートの結果では、対象グループと比較すると、ALSの患者は、男性の場合、誠実さと外交性が高く、女性の場合、それに加えて協調性も高く、神経質かげんに関しては対象グループより低い結果だったとのことです。遺伝的特性はパーソナリティ形成に影響し、性格特性はライフスタイルの選択と一致すると考えると、性格によってある特定の疾病へのかかりやすさがあるかもしれないと結論づけています。とても「いい人」と言われる人は他者への気遣いで自分の感情を抑制する傾向があり、意見が異なっていてもなかなか発言せず、厄介な頼み事をされてもなかなか「No」と断れないタイプの人が多く、日々の生活で本人が知らないまま大きなストレスが蓄積しているのかもしれません。
和訳:
ALS患者の多くが「素敵な」性格を持っていることが示唆されている。
しかし、これまでのALS患者の性格に関する研究のほとんどは、参加者の数が限られており、性別による性格の違いも考慮されていない。
我々は、ALSの危険因子に関するオンライン・アンケートから得られたBig Five Inventoryのデータを用いて、ALS患者の性格特性を調査した。
オーストラリアのシドニー大学の研究発表論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6192405/pdf/BRB3-8-e01119.pdf
ドイツのマーティンルーサー大の研究者たちも似たような論文を出しています。彼らの調査結果によりますと、ALSの患者さんたちは特に”Agreeableness(協調性)”においてダントツに高いとのことで、それは逆の形容詞ペアーとして使われた「頑固ー従順」と、「利己的ー親切」に対して、高いスコアが出たことが主な理由と説明しています。性格の構成がALSへのなりやすさに直接影響するかに関しては、筆者たちはまだOpen(結論付けていない)と筆記されています。読者のみなさんにも思い当たる点があるかもしれませんね。ALSは非常に複雑な病でそんな単純な分析はサイエンスではないという意見ももちろんあります。(同意でも反論でもコメント頂ければ幸いです。)
ドイツのマルティンルーサー大学の論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5256182/
Oct 31, 2023 Reported by Nobuko Schlough
Dec 12, 2023 Corrected by Kiyoshi Nagasawa, Editor in cheif, P-ALS