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[ 米国・カナダ ] 集束超音波をALS治療機として使うトライアル、近々開始

読者の皆様もおそらくご存じのようにALS疾患では脳幹と脊髄の中にある下位運動ニューロンと、そして大脳の運動皮質から出ている上位運動ニューロンの両方が侵されます。ですから下位、上位の両方のニューロンを治療できずにはALSという疾患は効果的に治療できません。しかしながら上位運動ニューロンに治療薬を届けることはいまだに大きな難問のままでいます。

それは血液脳関門と呼ばれる脳を守るバリアーが脳を完璧に囲んでいるからです。英語では血液脳関門はBlood-Brain Barrierですが、通常、略語でBBBと呼ばれています。 血液脳関門は血流の中のウイルスやバクテリアや寄生虫が脳の中に入り込まないように守ってくれる一方、ALSに侵されている脳内の標的領域に治療薬を到達させたくともこのバリアーが防いでしまうという不便さがあります。

脳に直接薬剤を届けるには脳に直接コンタクトできるように開頭する、つまり頭蓋骨に穴をあける「侵襲的な方法」がありますが開頭は「頻繁な投薬」のためには行えません。

その解決策として、カナダのトロント大学とその系列施設であるサニーブルック研究所がMRガイド下収束超音波(略してMR-g FUSという医療機器)を用いてBBBに一時的に穴を開け、治療薬を届けるという大胆なメソッドを発表しました。超音波の音響で穴を開けるので、メスを使わない非侵襲性のアプローチです。人間に対する安全性実験は4人のボランティア患者の勇敢な決断と大貢献により2019年に世界初でなされ成功しております。その後着々と研究が続いてきており、今年の夏、Focused Ultrasound Foundation(収束超音波協会)にALS Association(米国・カナダALS協会)が研究グラントを提供し、両協会のファンドを用いてパートナーシップによる大々的な人間トライアルをもうすぐ開始する準備が進行中というニュースが掲載されています。

このトライアルにより、ALS患者の大脳の運動皮質のバリアを開口することの安全性をさらに立証できること、またさらに何らかのバイオマーカーとなり得る脳内物質の発見につながることも期待もされているようです。血液脳関門のバリアを開口する際に、脳から何らかの重要な鍵となる液体物質が流れ出て血流に入り込むかもしれません。そうであるならば、その物質は依頼性の高いバイオマーカーとして診断に利用され得ます。そしてそれがより正確なALS診断につながるかもしれません。 また同時に、BBB開口の主要目的である、治療薬の脳へのデリバリー(到達)も可能となります。収束超音波治療法により、ALSの患者さんたちの治療がより効果的になり進行を大幅に遅らせ、さらに病状のリバースが可能となることを期待します。
写真: サニーブルック研究所のサイトから 

https://sunnybrook.ca/content/?page=focused-ultrasound-treatment-research

今年9月にアップデートされたFUS協会のサイトに掲載されているALSに関する論文

トロント大学とその系列のサニーブルック研究所のチームが、MR-gFUSを用いて初めて脳関門BBB開口の人間トライアルに関する論文

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31558719

Sunnybrook Research Centerのサイト:

https://sunnybrook.ca/content/?page=focused-ultrasound-treatment-research

ALS Associationのサイト:

https://www.als.org/blog/focused-ultrasound-and-potential-transform-als-treatment

2024年10月21日 レポーター 伸子シュルー (米国)

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