この1−2年で欧州や米国の各地から異常のあるTDP-43タンパク質をターゲットとした新しい治療法が続々と発表されています。 読者の方もこのコラムで何度も目になさっているのでTDP-43というタンパク質の名前には馴染みがあると思います。 家族性、孤発性全てを含むALSの97%にこのタンパク質の病理(細胞核の外に出てしまい細胞質の中で凝縮し毒素化する)があることはもう何年も知られています。このTDP-43の異常が運動神経細胞死に関与していると言われています。 そのTDP-43を標的とする新しい治療法がスイス、オランダ、米国ボストン、テキサス州オースティンの会社から発表されています。ここではそのうちの4つをご紹介します。
1 スイスのAC Immune SA社のACI-5891薬
ヒト化モノクローナル抗体で、異常のあるTDP-43をターゲットとしてその分解を促進するようデザインされている。 AAV 9というベクター化されたタイプの抗体も研究されており、脳内でIn Vivoの抗体工場として継続して働くGene Therapy(遺伝子治療)として現在テスト中。プリクリニカル(動物実験)では、脳神経内の病理的リン酸化TDP-43を58−68%減少させたと発表されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40518671
2 オランダのVector Y Therapeutics社のVTx-002薬
ALS用の治験段階の遺伝子治療で、FDAからFast-Track 指定を与えられ、最初のヒトでの臨床試験として、現在Phase 1/2 PIONEER-ALS 治験中。 この薬は病理的な形態のTDP-43のみに結合することで、TDP -43凝集を抑制し、スプライシング以上を是正し、正常な各機能を’回復させるようデザインされています。 すでに臨床上の安全性を確認されているAAV5.2というベクターを用いて遺伝子ペイロードを一度大槽内投与するだけで、このVTx-002という抗体は細胞内で標的細胞内で継続的に産出されます。
https://clinicaltrials.gov/study/NCT07287397
3 米国ボストンのDewpoint社のTDP-43 Modulator (Small Molecule Condensate Modulator)
病原性TDP-43凝縮体を修正する目的でデザインされた低分子化合物。
病原性TDP-43凝集体を標的とする、クラス初の凝縮体調節型低分子開発候補化合物。
疾患関連系において、TDP-43のスプライシング機能を全体的に回復させるもので、
複数の動物モデルにおいて生体内活性を示し、疾患修飾を裏付けるバイオマーカー測定結果が得られています。
4 米国テキサス州オースティンのMindwalk社の細胞内抗体イントラボディー
Mindwalk 社は今月1月14日にALSやFTD,アルツハイマーに関与する疾患原因タンパク質である、ミスフォルドされた(誤って折り畳まれた)病原性TDP -43を特異的に標的とするモノクロナル抗体およびイントラボディ(細胞内抗体)の検証を発表しました。 毒性のあるミスフォルドのものと健康なものとの識別がきちんとできるというブレークスルーだと言及しており、脳神経変性疾患における長年のチャレンジに希望をもたらせてくれるものとしています。
https://www.perplexity.ai/page/new-antibodies-target-toxic-td-zjLVLYmIRyuJglIikrW26Q
以上
レポーター: 米国在住 伸子シュルー(Nobuko Schlough)
「ゆめばす」だれもが行きたい場所に行ける社会の実現