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[ 英国 ] UNC13Aタンパク質の研究開発

イギリスでは現在約4000人のALSと診断されている患者さんがいるとされており、300人に1人の割合でいるとされています。日本では約1万人の患者数とのこと、イギリスの人口は日本の約半分なので、割合的には大体同じくらいなのではないかと思われます。

イギリスでは、EXPERTS-ALSというイギリス国内の主要大学および研究所11ケ所が相互協力をすることにより、より大規模な臨床試験に進めるための最も有望な候補薬を迅速に特定することを目的に2024年11月に発足されました。

今回はEXPERTS-ALSに参画している主要大学の1施設である、UCL (University College of London)からのニュースをお伝えします。

UCLにおける運動ニューロン疾患(MND)研究の進展の短編フィルムによる紹介です。(*イギリスではALSはMND(Motor Neuron Disease=運動ニューロン疾患)のうちのいち疾患という定義です)

このフィルムでは、ピエトロ・フラッタ教授とエリザベス・フィッシャー教授(UCLクイーン・スクエア神経学研究所)へのインタビューが特集されており、MND患者を治療するために使用できる新しい遺伝子治療の研究の進展について語られています。

New short film showcases progress in Motor Neuron Disease research at UCL | Brain Sciences – UCL – University College London

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2021年、研究者たちは運動ニューロン細胞の損傷の主要な原因が、神経細胞が互いにメッセージを伝えるのを助けるUNC13Aというタンパク質の喪失であることを解明しました。MNDの患者では、このタンパク質を作るための指示が破綻し、細胞はUNC13Aを作ることができなくなります。

この発見は現在、UCLのスピンアウト会社であるバイオ医薬品会社:トレースニューロサイエンスによる7800万ポンドの投資でUNC13Aを標的とした治療法の開発に使用されています。同社は、この治療法が2026年に人間における安全性試験に進み、その後臨床試験に移行することを期待しています。

このフィルムでは、フラッタ教授とオスカー・ウィルキンス博士(フランシス・クリック研究所)が考案した遺伝子治療を提供するための新技術を研究しています。この新しい遺伝子治療のデリバリーシステムは、MNDによって影響を受けた細胞でのみ活性化され、他の細胞では非活性のままであることを確認しています。これにより、これらの細胞での副作用のリスクが取り除かれます。

ピエトロ・フラッタ教授のコメント:「もしこの遺伝子治療がうまくいけば、難しい病気に多くの望みをもたらすでしょう。これが今から2年以内に患者に届くことを本当に願っています。」

エリザベス・フィッシャー教授のコメント:「ベンチからベッドサイドへ、基礎研究から患者に効果的な治療法へ移行するのは、通常非常に長いプロセスです。ここでの変化の進捗を見守るのは素晴らしいことです。これまでの何年もの間、この分野は非常に困難でした。驚くべきことです。」

引き続きショートフィルムの作成、進捗の更新を行っていくとのことなので、注目していきたいと思います。

Info source: 

Motor Neurone Disease (ALS): Causes, Symptoms, and Treatment

EXPERTS-ALS – About EXPERTS-ALS

New short film showcases progress in Motor Neuron Disease research at UCL | Brain Sciences – UCL – University College London

2025年3月18日 報告者 川島ときこ@P-ALS ロンドン

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