昨年(2024年)10月8日に岐阜大学の本田諒先生たちが国際論文に発表した研究をご紹介します。本研究はTranslational Neurodegeneration誌にオンライン投稿されました。
少し古い研究発表ですが、2013年に東邦大学大森からALSの診断までにかかった時間は13.1ヶ月との調査結果が出ています。現在ではこれより短い時間で診断がされているとは思いますが、神経変性疾患であるALSやアルツハイマー氏病などなどは病気を示す生理マーカーを検査で使うことができない状況が続いています。今回のご紹介の研究開発はそのマーカー候補といわれるALSの場合はTDP-43、アルツハイマー氏病の場合はアミロイドベータ(β)らの試験管での増幅が不安定が故に、確立されてきた検査方法では検出できない状況を打破しようという開発研究です。開発での要はこの不安定な状況を打破する安定化のための界面活性剤を探し出す、だったようです。論文を読んでいると時間のかかる作業が想い浮かびます。論文:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39380080/
界面活性剤:Brij-58
検査方法はシード増幅アッセイ(SAA)で、この検査法はプリオン病やパーキンソン病では有効な検査法として健常者と罹病者を識別できるもので、さらには2023年のLancet誌に掲載された研究は、過去の臨床試験の規模を拡大して、様々な種類・病期のパーキンソン病患者が含まれる多施設コホート試験の参加者に対し行われ、発症リスクの兆候がわかると期待されています。ALSについては岐阜大学の研究報告の最後に書かれていますが、臨床検査に使えるように今後努力が続けられるようです。実現すれば早期の診断、症状の進行観察、さらには治療薬の開発でのモニターリングなど現在の診断より素早い治療に向けての大きな改善が期待できるでしょう。
2025年2月3日 報告者 永澤 清 @PALS