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[ 米国 ] ALS病の進行は免疫の暴走による。 ALSは自己免疫疾病の一つか?

サンディエゴにあるラホラ免疫研究所  La Jolla Institute for Immunology (LJI)

米国南カリフォルニア、サンディエゴの世界的に有名な免疫学研究センター、La Jolla Institute of Immunology(ラホラ免疫研究所)から最近、注目を浴びる論文が出されました。

ラホラ研究所は、NYのコロンビア大学研究所との共同研究の結果、ALS病は自己免疫疾患の一つと言えるのではないかという見解を提案しました。少なくとも一部のALS疾患のタイプではそう言っても過言ではないかもしれない、あるいは少なくとも数多くあるALS疾患の病因のうちの一つ、さらにはALS病の進行の原因の一つではないかという考えです。

ALSの進行は自己の体を攻撃する免疫が原因だとしたら、その暴走を抑えることにより進行を遅らせることが可能ではないか、あるいは場合によってはALSの発症そのものをも防ぐことも可能かもしれないと研究者たちは仮定しました。T細胞には5種類ほど違う種類*がありますが、その中の一つである、「制御T細胞」という種類のT細胞は免疫の過剰な働きを抑える役目を担っています。 つまりその制御T細胞を増加させることによって、人間の体に生来備わっている鎮静機序を強化することができます。制御T細胞は免疫の暴走を抑えて、病の進行を防げてくれるというアプローチです。T細胞には侵入した細菌やウイルスを殺害する種類もありそれらは炎症性T細胞と呼ばれています。それら炎症性T細胞の過剰な働き(暴走)で炎症が過剰なレベルまで増加し、ALSやパーキンソン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患発症のトリガーとなり、そして発症後も病を進行加速させているのではというのです。それなら患者の制御T細胞に極力働いてもらってその暴走を抑えてもらえるのではとの発想です。

ALS患者においては炎症性であるCD4陽性T細胞(ヘルパーT細胞)が、脳神経の中で自然に発現されているC9orf72というタンパク質を誤って攻撃するという過剰な免疫反応が見受けられることに研究者たちは以前から気づいていました。このような自己攻撃は炎症を引き起こし、そして炎症は神経細胞死を加速させることが研究者の間では知られています。

ラホラ免疫研究所とコロンビア大学は共同研究を行い、40人のALS患者と28人の健常者の血液サンプルを分析した結果、抗炎症性である制御T細胞が多いALS患者は、少ない患者に比べ予測生存年数が大幅に長いということが判明されました。その論文は権威ある医学誌Nature誌にて去年の秋に発表され、今年に入ってさらに注目を浴びています。

自己免疫応答はALSの病態において重要な役割を果たしているということ、ALS疾患の進行に伴う急速な神経細胞死にはT細胞が関与しているという仮説は長年存在してきました。しかし、これまでそのような自己免疫応答の標的となる抗原は報告されていませんでした。このラホラ研究所の研究において、ALSがC9orf72抗原の認識に関連していることが示され、そして認識される特異的なエピトープが特定されました。さらに、これらの応答はサイトカイン*の一種であるインターロイキン5(IL-5)およびインターロイキン10(IL-10)を選択的に産生するCD4陽性T細胞によって媒介されること、そして抗炎症性IL-10を介したT細胞応答は、予測生存期間が長い患者において有意に強いことが明らかされました。

「これらの知見は、制御性T細胞の増強を目的とした治療戦略の可能性を示唆するもので、そしてALSにおける精密医療を可能にし得る、抗原特異的T細胞応答の重要な標的を特定するものです」と論文の筆者たちは記述しています。この新しいアプローチによって、より多くのALS患者たちが病の進行を抑制することができることを願って止みません。

                                  

https://www.nature.com/articles/s41586-025-09588-6

関連リンク

https://magazine.columbia.edu/article/als-autoimmune-disorder-research-news

https://www.statnews.com/2025/10/01/als-autoimmune-responses-new-study-journal-nature/                                             

T細胞の種類

1. Helper T Cells (CD4+) ヘルバーT細胞

2. Cytotoxic T Cells (CD8+) キラーT細胞(細胞傷害性T細胞)

3. Regulatory T Cells (Tregs) 制御性T細胞

4. Memory T Cells  メモリーT細胞

5. Natural Killer T (NKT) Cells  (自然免疫系T細胞 ナチュラルキラー)

サイトカイン

サイトカインとは、細胞から分泌される非常に小さなタンパク質の一種で、細胞同士の「情報伝達物質」として働きます。主に免疫や炎症のコントロールを担っており、司令塔として他の細胞に攻撃の開始や停止を指示する重要な役割を持っています。

サイトカインには数百種類以上が存在し、代表的な種類は以下です。

  • インターロイキン (IL): 白血球同士で情報をやり取りし、免疫細胞の増殖や活性化を促します。
  • インターフェロン (IFN): ウイルスに感染した細胞から分泌され、周りの細胞に危険を知らせてウイルスの増殖を防ぎます。
  • 腫瘍壊死因子 (TNF): 強い炎症を引き起こし、異物の排除や細胞の破壊を担います。

ラホヤ免疫研究所(LJI)                                  1988年に独立した非営利研究機関として設立されました。 サンディエゴに拠点を置く研究所には免疫学のみを専門とする世界トップクラスの科学者が集結しています。LJIの科学者たちは免疫システムの力を活用しがん、自己免疫疾患、感染症、神経変性疾患の克服に取り組んでいます。

2026年6月4日 報告者 Nobuko Schlough (伸子シュルー、米国在住)@P-ALS

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