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[ iPS細胞の技術開発2025-3 ] My iPS細胞事業の進展

京都大学、患者ごとに「マイiPS細胞」製造 施設稼働へ 日本経済新聞 2025年3月18日 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF11ANO0R10C25A3000000/ 

をもとにレポートします。

本HPALS世界ニュース2024年4月27日付にて、「iPS細胞技術とALS(1)」my iPSプロジェクトについて報告しましたが、今年2025年4月に「Yanai my iPS製作所」が大阪中之島に開設されました。これは、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団によるプロジェクトの一つです。本財団は「iPS細胞ストックプロジェクト」として、医療用のiPS細胞をあらかじめ製造・備蓄し、良心的な価格で企業や研究機関等に提供する事業を行っています。これは、患者以外の第三者からの血液細胞からiPS細胞を作成・備蓄するものです(他家iPS細胞)。一方、my iPSプロジェクトは医療用のiPS細胞を患者本人の血液から作製し(自家iPS細胞)、再生医療に用いることを目的に開始されました。他家iPS細胞の作製においては、多くの人に適合する型を持つ人の細胞から作ったり、さらにその細胞にゲノム編集を施したりして、拒絶反応が起こりづらくしていますが、体質などにより拒絶反応が起こる人が一定数いるため、これに対応するためのプロジェクトです。

 本プロジェクトは、「1人分で数千万円かかるとされる製造コストを工程の自動化によって大幅に下げる試みが行われており、現在はドイツ製の培養装置を14台備え、iPS細胞を全自動で培養する。血液から細胞を取り出してから約1カ月でiPS細胞を製造できる。医薬品製造時の管理基準(GMP)の審査に通り次第、マイiPSを中心に少量の製造を始める見込み」とのことです。

キャノンなどと国産の培養装置の開発も並行して進めており、将来は装置を増やして年間1000人分のiPS細胞を製造できるようにする。AI(人工知能)技術も組み合わせて最適な培養方法を確立し、1人分の製造コストを100万円ほどに下げる。コスト目標の達成を25年としていたが、現時点では原材料コストだけで100万円かかってしまい、まだ達成に至っていないとのこと。「ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長がプロジェクトに賛同し、21年度から9年間、毎年5億円を寄付することを決めた。施設はこの寄付金によって建てられたため、同氏の名前を冠している。」と報告されています。

2025年6月22日 報告者 橋口裕二@P-ALS

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