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ALS病因となる異常タンパク質の新たな除去経路を発見

 ~TBK1を起点とする「細胞の防御機構」が治療標的となる可能性~ 

名古屋大学、2026年10月13日

名古屋大学環境医学研究所病態神経科学分野の酒井 昭平 特任助教、山中 宏二 教授らの研究グループは、名古屋大学大学院医学系研究科神経内科学の井口 洋平 講師、勝野 雅央 教授、英国キングスカレッジロンドンのジェミーン・スリードラン シニアリサーチフェローらとの国際共同研究で、ALSの運動神経細胞で異常蓄積する病因タンパク質TDP-43を分解除去する新規経路として、TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路が存在することを明らかにした。本経路が、今後の新規治療標的となる可能性が示唆されたことを報告しています。

下記をもとに、本報告についてレポートします。詳細は下記を参照ください。

https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2026/10/als-tbk1.html

https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/upload_images/20261013_riem.pdf

本研究のポイント

●ALSの運動神経細胞で異常蓄積する病因タンパク質TDP-43を分解除去する新たな経路として、TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路を同定した。

●ALS患者由来TBK1変異体はIFNβを正常に誘導できず、また、ALS患者の運動神経細胞ではIFNβ受容体の発現低下が認められた。

●TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路の不全がALSにおけるTDP-43異常凝集メカニズムの一端である可能性が示唆された。

  ALSの患者さんの大多数では、通常では核内に存在するTDP-43タンパク質が、細胞内に異常に蓄積し、凝集や過剰なリン酸化を呈する「TDP-43病理」が認められますが、異常なTDP-43が生じる仕組みや、それを運動神経が除去するメカニズムは十分に明らかにはなっていません。

TBK-1タンパク質(以下TBK-1)をコードする遺伝子の機能喪失型変異は、TDP-43病理を伴う遺伝性ALSの原因となることが知られていました。TBK-1は不要なタンパク質を分解する「オートファジー」に関与していることが知られており、TBK-1の機能低下により、オートファジー機能障害が起こることが、ALSの病態に関与していると考えられてきました。しかし、TBK-1は多機能な分子であり、オートファジー以外の仕組みによって、TDP-43病理を制御している可能性については、十分に検討されてきませんでした。今回、神経系培養細胞、ヒトiPS由来運動神経細胞、ALSモデルマウス、ALS患者の脊髄組織などを用いて、TBK-1がTDP-43病理を制御する分子機構を解析しました。

本研究グループの先行研究にて、細胞質に異所存在して凝集しやすい、単量体型TDP-43が見出されていましたが、今回の解析の結果、単量体型TDP-43が細胞内で増加すると、TBK-1がTDP-43と物理的に相互作用し、TBK-1が活性化(リン酸化)されることが見出されました。さらに、活性化されたTBK-1は、「インターフェロンβ(IFNβ)*」の産生を促進し、IFNβは、運動神経細胞において、「免疫プロテアソーム**」と呼ばれる、タンパク質分解装置を誘導し、凝集しやすい単量体型TDP-43の分解を促進することが明らかになりました。以上の結果から、TBK-1には従来知られていた、オートファジー機能に加え、「TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム」経路を介して、異常なTDP-43を除去する新たな仕組みが存在することが分かりました。

 ALS患者のTBK-1変異体では、IFNβの産生を促進する機能が失われていました。さらにALS患者の脊髄を解析したところ、TDP-43病理を呈する運動神経細胞では、IFNβを受け取る受容体IFNAR1が減少していました。また、発症期のALSモデルマウスの脊髄から切り出した運動神経細胞では、通常のプロテアソームは低下しましたが、免疫プロテアソームは上昇していました。一方、ALSモデルマウスのTBK-1遺伝子の半分を欠損させると、免疫プロテアソームの誘導が抑制され、タンパク質の蓄積が確認されました。これらの結果から、個体レベルでも、TBK1-IFNβ-免疫プロテアソーム経路が、異常タンパク質の除去に重要な役割を担う可能性が示唆され、本経路が新規治療標的となる可能性が示唆されました。と報告されています。

*細胞から分泌され周囲の細胞に情報を伝える「サイトカイン」と呼ばれるタンパク質の一種。通常はウイルス感染などに対する自然免疫において、重要な役割を担う分子であるが、ALSを含む、様々な神経変性疾患に関与することが知られている。

**細胞内の不要なタンパク質を分解する「プロテアソーム」の1種。通常はウイルスなどの病原体の感染に応答して、誘導される。

 

 TDP-43をターゲットとした治療薬開発について、2026.2.1付けALS専門情報にて報告されており、すでに治験に入っているものもあります。また、2026.9.4付けALS専門情報にて、ショートRNAがTDP-43凝集の抑制、解消に有効との報告もされており、今回の結果も併せて、この分野の研究開発が活発に進むことが期待されます。

2026年10月21日 報告者 橋口 裕二@P-ALS

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